米をかつぎ上げて

米をかつぎ上げて

串本町袋 浜口 清

私は串本の農協に勤めていた関係で、ちょうどあの日はさつまいもの割当てを夜の12時過ぎまでやってたんです。いつもやったらそのまま泊まっていくんやけど、あの日に限って虫の知らせと言うんかいねえ、なんとなく帰らなあかんと思って帰ったんです。帰っている時、風ひとつなく無気味なほど静まりかえってい、なんにも寒いと思わんかったんですわ!

地震揺った時は、弟と2人で離れで眠っていたんです。揺っているなあと夢うつつで知っていたんですが、そんなにも大きいとは思わんと、眠りこんでいたんや。けど親父の起こす声を聞いて、初めて大きいなあと感じ、一まず外へ出なあかんと思って戸を開けかかったんですが、もう開きませんでした。

けどなんとか逃げたんです。外に出てみると、1米20~30センチの高さのブロックベイが倒れていました。

よく昔の人は井戸水が減った時は津波が来る、と言っていたのを知っていたんです。こら津波が来るということで、すぐに裏の山に逃げたんやけど、逃げる前に何か運び出さなあかんと思い、家の中に運び出しに行ったんやけど、津波の来る音が聞こえてきたんで、恐ろしくて仕事も手につかんのですわ。

けどなんとかフトンと米3とう、もち米、タバコ、キセルを持ち出したんです。私と弟でこれを持って山にかけあがったんです。今から考えて見ると60キロもあるものをかついでようかけ上がったと思います。

山に上がるともう1回目の波が土手のように盛り上がりながらやって来たんです。音ときたら、ゴォーという音とメシメシという音が重なり合って、なんともいえん気持ちの悪い音が聞こえて来ました。2回目の波で、海岸線のほとんどの家がやられました。

私の家も波のため、屋根が90度向きを変えてすわっていました。家の中は、タタミが大掃除をやったみたいに、とんがり山のように2枚重ねになっていました。

私の覚えているのは、こんなことぐらいやねえ。

杉本崇幸記

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